雨宮まみさんの死がこじらせ女子に衝撃を与える理由

      2016/11/20

ワタナベアニさんに撮っていただいたポートレイト。知ってるのに知らない自分。

Mami Amamiyaさん(@mamiamamiya)が投稿した写真 -


雨宮まみさんの死亡を知らせるニュースが飛び込んできたとき、個人的にショックを受けたのですが、その後のツイッターやニュースへのコメント欄、追悼のブログ記事などの凄さにも衝撃を受けました。

雨宮まみさんと言えば、『女子をこじらせて』という著作で一般的にも知られる存在となり、「こじらせ女子」という言葉は流行語にもなりましたが、そこまで人気があるとは思っていなかったからです。

40歳という若さで亡くなったこと、死因が「事故による心肺停止」としか報道されず、過去の記事や言動から自殺の可能性を勘ぐる人が多かったことなどが、ニュースバリューを高め、瞬間風速的に拡散されたのかもしれません。

しかし、これまで彼女が表現してきたことの価値は、流れていくニュースの一つとして消費されて終わるものではありません。

そこで、なぜこんなにもたくさんの人の心の中に雨宮さんの存在が大きく刻み込まれていたのか、その理由を書いておきたいと思いました。

こじらせていない女子などいない

雨宮さんが書いてきたことは、大勢の女性が共感し深く頷くものばかりでした。

それは全ての女子は程度の差はあれ、こじらせながら生きているからです。

雨宮さんに対する反発の典型が「こじらせてるとか言ってるけど、美人だし、モテてるし、仕事もうまく行ってるし、なんなん?そんなんでこじらせてるんだったらこっちは干からびてるわ!」というものです。

これはインフルエンザと肺炎が言い合っているようなもので、自分の不幸度自慢、悲劇のヒロイン合戦というよくあるパターンですよね。

結局、みんな何かしらこじらせているわけです。

雨宮さんは「抽象化された普遍的なこじらせ理論」を研究してきた学者ではなく、自分自身をフィールドワークして、ひとつひとつ目をそらさず、赤裸々に語り、考えてきた体現者でした。

そのため、親が厳しくて、塾に行くふりをしてB'zや米米CLUBのライブに行っていた話や、地元の大学を出て公務員になる将来しかイメージできなかった高校時代の話など、おなじような道を歩んできた女子にとっては共感しやすいという側面はあったでしょう。

東京で大学生活を送るまでは、ニキビが酷くて容姿に自信がなく、異性と自分とが関係を持つことなど考えられない状態で、恋愛といえば漫画や小説の中の世界のものだと思っていた。
でも20歳を超えたある日、一生自分が恋愛など出来ずに死んでいくのかと思うと、悲しくなって一日中泣いてしまった。

こういう話も「自分にとっての理想の世界は他人が住む世界で、自分はそれを眺めたり想像したりするしかない。」と感じることは誰しもあるはずで、雨宮さんは私の悩みがわかってくれる人かも、と思うようになるんですね。

インドの泡立てコーヒーを飲む

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「ペロッと舌を出す可愛い雨宮さん」

雨宮さんはこじらせながら生きる方法を教えてくれた

もちろんただ「こじらせ自慢」をダラダラ聞かされるだけでは、嫌気がさして終わりでしょう。
そんな愚痴をこぼすだけのやつらは周りにいくらでもいるのですから。

でも雨宮さんはこじらせながら、それをどう考えたらいいのか、乗り越える方法や、そのままでも悪くないと思える理由などを、自分の実体験から教えてくれました。

雨宮さんの文章を読むことなく、亡くなる前の「5時に夢中!」だけしか見たことないという人なら、「美人でセレブでオシャレで頭が良くて上品なのにセクシーな(エロい)トークができる天上界の人」のように映ったかもしれません。

しかし実際はこじらせながら考えて生きた結果があの姿だったわけです。

雨宮さんは自分の容姿に自信が持てず、ひらき直って逆に坊主頭やベリーショートにしたり、男に見えるような格好をしていた時代に「テレビで見た武田真治の一言」で目覚めます。

彼は言いました。「今の時代、個性的なオシャレで自分のよさをいくらでも演出できる。だから、自分はブスだからとかそんな言い訳は通用しない。」

『女子をこじらせて』より引用

つまり「美しさというのは絶対的なものが1つあるわけじゃない。一人一人それぞれの美しさがあるのに、一般的な美しさから外れているからと言い訳して努力しないのはダメだ。」ということです。

それを聞いたときショックを受けて、すぐにミシンを取り出して、ヒョウ柄のスカートを縫ったとのこと。
それから1ヶ月も経たないうちに人生で初めて男性と結ばれた、と。

もちろん人はそんなに簡単に変われないですし、変われたとしてもすぐに欲しいものが手に入るわけではありません。
雨宮さんもヒョウ柄のスカートを履いてから、GUCCIのバッグを買う決心がつくまでに15年ほどかかっているのです。

こじらせ女子から脱却するというわけではなく、こじらせながらどう生きるか、ということを他にもいろいろ教えてくれました。

なぜ上から目線にもならず、卑屈にもならなかったのか

雨宮さんは女性の権利を大切にする立場でしたが、いわゆるウザいフェミニズムに飽き飽きしている女性にとっても受け入れられる存在でした。

キレイな服を着たり、美しくなろうと努力すると女性からは「男に媚びている」と言われるし、ライターという職業としても、文章の中身だけではなく「美人ライター」という色眼鏡をつけて見られることとの戦いがあったのです。

でも雨宮さんの戦い方はヒステリックに反発するという方法ではありませんでした。
雨宮さんは自分の本当の欲望と向かい合うという方法で戦ってきたのです。

社会的に有利になるために自分の美貌に磨きをかけ、ブサイクな女性をあざ笑い、男性を手玉に取る、というような型にはまった考え方は、おそらく40年間で一度も持たなかったのではないでしょうか。

一般的にはこう、社会的にはこう、常識的にはこう、という風に一度は理解した上で、「でも最終的には私とあなたの問題よね」と考え続けた形跡があり、そこが人々の心に刺さる理由だと思います。

一旦相手の言い分も受け入れて、「そうなのかも?」と思いつつ、いやでも違うような気がするけど、わからない。
そして「結局自分はどうしたいんだっけ?」と見つめ直す。
この繰り返しを何度もしてきたのでしょう。

だから自分の弱さや社会的地位の低さを武器に相手を攻撃するのが趣味のような、いわゆる「上から弱者」にならずに、1人の女という性を与えられた人間として表現しつづけられたのだと思います。

その雨宮さんを失ったということは、こじらせながら生きる方法を一緒に考えてくれる人が1人いなくなってしまったわけですから、この喪失感は筆舌に尽くし難いものがあります。

どうしたらいいんでしょうか?

誰か教えてください。

なぜ美容・健康情報サイトにいきなり雨宮さんのことを書いたのか

脱毛情報や美容整形の情報をお伝えするサイトに、なぜいきなりライターさんの追悼文のようなものを書いたのか少しご説明します。

雨宮まみさんのファンをこじらせて公私混同をしているのかもしれませんが、女性は生まれてただそこにいるだけで女性であるわけではない、という雨宮さんの根底を流れる思想のようなものを知ってほしかったからなのです。

美容情報を検索して調べる女性は、美しくなりたい、コンプレックスを解消したいといった目的があると思います。

でも何のために?と深く自問自答することはそんなにないですよね。
雨宮さんはそこを徹底的に考えざるを得なかったのではないでしょうか。

雨宮さんが自分の気持ちを深く掘り下げていくうちに発見した答えの一つが「女装」です。

女性が「女装する」っておかしいような気がしますが、女性として生まれただけでは女性になれない、女性も女装して女性になるんだ、ということに気がついたのがすごい。

確かに家で1人でゴロゴロしているときの自分は女性でも男性でもない一つの肉体です。

誰かがいないと自分の性なんて、意味も価値もない。

もちろん男性にあるものがなかったり、男性にはないものが毎月来たりはしますが、それは朝太陽が昇ったり、風が木の葉を揺らすのと同じようなものとしての性です。

その時代、その場所に与えられる性と、たった1人の相手と向かい合うときに現れる性があります。

それらはうれしかったり、幸せだったり、悔しかったり、悲しかったりする性です。

渇望することも、逃げたくなることもあります。

その性と向き合うことを、雨宮さんは女装すると表現しました。

ジェンダーのことを考えることはとても難しいことのようになってしまっていて、触らぬ神のように避けられるなら避けたいもんです。

でも自分にとっての性の問題は避けたくても避けられないですし、渇望しても簡単に手に入るものではありません。

キレイになりたいと思う気持ちがあるのであれば、正直に向き合ってキレイになろうとするべきです。

これは人によってはあたり前のことかもしれませんが、人によっては激しい戦いといえるでしょう。

「自分なんか何したってどうせブスだから、、」「いい歳をして何をしてるんだって思われるんじゃないか、、」「どうせ無駄遣いになるんじゃないか、、」「がんばってもあの人に気に入られなかったらみじめなだけだから、、」などの強敵にやられてしまい、キレイになろうとすることすら出来ず、かと言って、何もしないと「おばさんどころかおっさんになってしまう、、」「お笑い番組を見て大声で笑ってるはずなのに、ガハハと笑ってる自分の姿を鏡で見るとなんか泣けてきた、、」みたいなことで激しく落ち込んでしまします。

姉御肌の美人などに相談するとあっけらかんと「さっさと整形でもサロンでもいけばいいじゃん。」と言ってくれて勇気をもらえるかもしれません。

でもそう簡単に言われると、正直自分の悩みなんてどうせわからないんだろうな、とも思います。

そんなとき雨宮さんはどう悩んで、どう乗り越えたのかな、と参考にさせてもらえる心強いこじらせ女子の先輩でした。
出来れば直接相談したい、話を聞いてもらえるだけもいい、という存在でした。

ビサラボもそんな悩みを抱えた人たちと一緒に悩みながら、少しでもキレイになっていいんだ、と思ってもらって、こういうのもあるけどどう?とアドバイスできるような存在でありたいと思います。

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